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脳log[20120528]



2012年05月28日 (月)

最終更新: 2012-06-07T01:42+0900

まだ10ページほど読んだところだけど、なかなかに読み進めるのがつらい。

 1.「犯行声明を行う」(10ページ)

声明は予告(する)や宣言(する)と違って動詞になってるとは思わないのでどうにもイメージが漠然としすぎる。俺は今も認めていないが、大学あたりでは俺が中高生の頃にはもう私語が動詞化(私語する)してたらしい。新聞の寄稿欄でそう読んだ。自分が少数派かもしれないとは思う。「お名前よろしいですか?」と言われて真剣にフリーズしたこともあるし。(尋ねられてるからには判断を下さねばなるまい。しかし……名前が良い?悪い?どういうこと? もちろん目の前の名簿に名前を書けということだったんだけど、一言一句に拘りすぎて応用がきかない理解が遅れる)。

 2.「僕」って誰?

浜村渚を「浜村」と指示し、瀬島直樹を「瀬島」「彼」と呼称する第三者視点の話だと思っていたら、11ページで突然「僕は、脇に置いてあった箱から二つのルービックキューブを取り出し、首をかしげている彼女の前に置く。」と、事前の描写もなく第三の人物「僕」が現れ、僕の一人称視点だということが明らかになった。誰ですか?

 3.読者としてのスタンスに迷う

少年犯罪が急増する昨今、政府は義務教育の内容を一新した。他人を尊重し弱者をいつくしむ心を育成するため、芸術科目の比重を多くしていったのだ。必然的に他の科目の内容が次々と削られることになり、「物事を数値化し、数理現象・物理現象など事実だけを重んじる科目は、心を尊重し他人をいつくしむ人間性を否定しうる」という理由から、理数系科目の授業は大幅に削減されてしまった。

という設定を、「トンデモである。数学はもはや欠くべからざる社会の基盤であり、あらゆる分野の基礎としてその重要性は増す一方だ」という風に自分は見ていた。 つまり、数学テロ組織・黒い三角定規の「私は、義務教育における数学の地位を向上させることを要求する」(7ページ)という大義に共感を持っていた、ということ。 ところが、「高木源一郎(通称、ドクター・ピタゴラス)という元数学者が主導する「黒い三角定規」。彼らの活動により、「数学はテロを育成する学問」という考え方が蔓延し、義務教育から数学は姿を消してしまった」(14ページ)という。組織の目的に反して事態は悪化している。 また、15ページ目で早々に人が死に、犯行声明が黒い三角定規の幹部候補から出される。「弁護士が二人、姿を消したのだ。そのうちの一人、佐々木弁護士は、行方不明になった次の日の早朝、遺体となって帰ってきた。弁護団の本部事務所に棺桶に納められて届いているのが発見されたのである。死因は、首を圧迫されたことによる窒息死だった。」(15ページ)。「最近、ボクたちの神聖なる活動が、心ない弁護団によって、邪魔されてる。よくないよね。だって、弁護士の仕事は本来、悪を挫くことだろう? ボクたちの活動は、究極の善。世界で一番美しい、数学の国を作り上げようとしているんだから」(16ページ)。 犯行声明は一切の共感を拒絶する内容で、これは、冒頭のトンデモ設定(だと読者である自分が考えていた)を作中人物自らが行動によって肯定している。手段が絶対的に誤っている(※人が死んでる)ために大義が成就する筋道も想像できない。著者は読者の数学への興味をかき立てておきながら物語の設定を肯定し数学教育が不要だと結論したいのだろうか。

シリーズ2冊目の、最初の10ページしか読んでないので早とちりなのかもしれないが、そうだったとしても不親切だとはいえると思う。