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[20231121]
2023年11月21日 (火)
新聞のコラムでムーンウォークとななめ立ちの具体的描写を読んで、それが先日『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』(長谷 敏司) を読んだところだということもあって、そうかマイケル・ジャクソンってダンサーだったんだなと腑に落ちたのだけど、すぐに数行前の冒頭で「歌とダンスで世界を魅了したマイケル・ジャクソン」と紹介されていたことを思い出したのだった。そもそもマイケル・ジャクソンを知らない人がいるとも思えないし、自分も名前と一種異様な姿を映像で見たことはあるけれど、知った最初からすでに伝説的な存在であり断片的な映像が目に入るばかりだったから、本業を真正面から見たことはなかった。実はマイケル・ジャクソンについて知っているようで知らなかったし、それ以上にダンサーとはいかなるものかということを全く知らなかった。おそらくダンサーなるものとのほとんど唯一といえる接点は『月の子』(清水 玲子) の主要人物アートがダンサーだという、その程度のものでしかない。だから『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』においてダンスを含む小説世界がバシバシと堅固に言語化されていく様は非常に気持ちよく新鮮だった。そうだったのかという発見と納得の連続だった。著者の人はあとがきで専門家への配慮から「くわしいかたからは、言いたいこともおありかと思いますが、ご容赦を」と書いていたし、十割からの減点法で言いたいことが当然に出てくるのかもしれないけど、素人である自分にしてみればゼロだった理解が9割に引き上げられたくらいのつもりでいるので、そこは誇ってほしいと思う。小説主人公の父親をきっかけとする中盤からの流れも見事に統合され、「今年のベスト1冊」におさまらない1冊になっていた。あとがきが「今、キャリアの中でも特別なのではないかと感じる作品を、ちょうど手離れして、みなさんのところにお届けしようとしているところです」から始まるのだけど、これがうぬぼれでも誇張でもないことに読者の立場から完全に同意する。すごかったんだよ(語彙力)。
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