今日の夕方、いつものように渋滞する琵琶湖東岸を唐橋に向かって走ってたときのこと。一つ後ろを走ってた車が強引に俺の前に割り込んできた。車一台分のスペースがあったわけでもないので、その車は斜めになって俺に被さったままだ。
腹の立つことにバイクに乗ってると強引な、言い換えれば下手くそな、追い越しは珍しくない。二輪や原付と見るやどうしても抜かさなければいけないと考える車は多く、そんな車のドライバーは前が渋滞してようが関係無しだ。
今日のもそんな一台だったのだけど、その車の後ろ半分がバイクと重なってるもんだからハンドルをボディに当ててやった。そしたら物音を聞いて助手席の窓を開けたのでそこまで行って、文句を言ってやろうと思ったら先に
真ん中を走るな!車のつもりか!左走っていけ!
とほぼこの通りの言葉で言われた。ちょっと信じられない発言に驚いたが「車とおんなじ扱いやねんぞ、法律では。そんなことも知らんのか、アホが!」と言い返した。それからどっちが先に前に出たのか忘れたがオッサンは2、3度バトルを挑んできて、その後諦めてしばらくは後ろを走っていた。わからなかったのだな。恥じ入ってミラーの点になるなら可愛げもあるのに。
(参考) 道路交通法 (法庫)
第2条、第3条の用語の定義によれば
オッサンは「普通自動車」「大型自動車」などタイヤが4つ以上あるものを指して「車」といってるし、俺もそのつもりで「車」を使った。だけど法律は一般語で書かれてるわけじゃない。用語には定義がある。俺は今日「普通自動二輪」に乗ってたけどそれ以前に「自動車」だし「車両」でもある。自動車の中には細かく分類があるが、(原付と自転車を除く)二輪と四輪の間に特別な区別はない。
オッサン曰く、(車線の)真ん中を走るな、ということだが
(通行区分)
- 第17条 車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において(略)
- 4 車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第9節までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。
今日のは、歩道があって、中央線が引かれた、片側1車線の県道。細かい条件は省ける。要は、「車道を走れ」「中央線の左を走れ」ということ。
自転車以外は自転車道を走ってはいけないとか、軽車両は路側帯を走れるとか関係のない部分は飛ばして、次、
(左側寄り通行等)
- 第18条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第25条第2項若しくは第34条第2項若しくは第4項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
(車両通行帯)
- 第20条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に3以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。
車両通行帯 (Wikipedia)のあるなしはよくわからんが、そんなこと関係無しに 軽車両だけしか左側端を走れといわれてないのは確か。
だけどここまで読んで、ほとんどの条文の主語が車両。歩道を走れないもの(車両)は全て車道を走れといわれている。非現実的すぎて車線の真ん中を譲らなくてよい根拠にするのは不安。
そういえば普通自動二輪の教習中にキープレフトという言葉を何度となく聞かされた。法律上は中央線の左側通行、左の車線通行(※一番右は追い越し車線)という意味しかもたないはずの言葉だが、現実的には二輪に左端を通行させる方が都合がよいからと、誤解させる意図をもって(狭い教習所内の道路で)使われてるんじゃないのか。うーん、ますます自信なくす。
高速道路も走れる「自動車」に対して "お車様に道をあけろ" はないだろ、とか、オッサンが自分で「車のつもりか」と言ってるように、すり抜けもせず堂々と走ってる者に対してそれが二輪であれ原付であれ蔑ろにするのは間違ってるだろとか、そういう感覚的なものでない確固とした根拠が欲しかったのに。
左って路側帯しかないやんけ、と思ってたがどうも違うらしい。歩道があるときは一番左の白線の左側も車道らしい(Wikipedia)。だからといってオッサンの言うことに理などないことは変わりないが。
(車両通行帯)
- 第20条
- 3 車両は、追越しをするとき、第25条第1項若しくは第2項若しくは第34条第1項から第5項までの規定により道路の左側端、中央若しくは右側端に寄るとき、第35条第1項の規定に従い通行するとき、第26条の2第3項の規定によりその通行している車両通行帯をそのまま通行するとき、第40条第2項の規定により一時進路を譲るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、前2項の規定によらないことができる。この場合において、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。
前半は長くてわかりにくくなってるけど、要は、追い越しを含む諸々の状況で、決められた場所以外を走ることができるといっている。例えば、片側に3車線以上ある道路の一番右端(中央線より)の車線は通常走ってはいけないけど追い越しのときはその限りではないといってる。そして後半は、追い越しするときはすぐ右の車線を使えといってる。右の車線を。(車線と車両通行帯はちょっと違うけど基本的に同じだと。よくわからない。くだらない区別)
(追越しの方法)
- 第28条 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
- 2 車両は、他の車両を追い越そうとする場合において、前車が第25条第2項又は第34条第2項若しくは第4項の規定により道路の中央又は右側端に寄つて通行しているときは、前項の規定にかかわらず、その左側を通行しなければならない。
第28条第2項は、前の車が右折するために右側によってるときは左側から追い越していきなさい、といっている。今日の話には関係ない。
こっちは反論の根拠がわかりやすく書かれてたね。追い越しは右から。満足。
と思ったら「追い抜き」なんてものがある。進路変更を伴わない追い越しと説明されるけど定義はない。だから左側を追い抜いたらダメとも決まってない。またまた雲行きが怪しくなってきた。
少し上で歩道があるときは一番左の白線の左側も車道だと書いたが、すり抜けは違法なのか?〜改訂版〜 で引用されてる大阪高裁の判決では、その部分は路側帯ではないが車道でもないらしい。こいつでオッサンのいう「左走っていけ」を否定することができただろうか。弱いか。
またしても、法律のグレーゾーンの走行や、自分の身を危険にさらす行為などを他人に強制される謂れはない、というような根拠に乏しい常識に基づいた結論。
関係ないけど、大学生ってのはこういう長い文章をうまく、論理的に、まとめるのがうまいんだろうな。敵わないよ。
教習所では最初に性格検査を受けさせられて自分の運転傾向を指摘されるのだが、これが結構当たる。自分は「周りに注意を向けすぎてわき見運転になってしまい前の車に追突する」とか「ルールを守るがそれを他人にも求めるあまり、俺が正義だ、みたいになってしまいがち」とかそんなことが書いてあった。車では運転技術の自信のなさからか穏やかで寛容でおとなしい運転なのだけど、バイクでは車にイライラしっぱなしである。
などなど。(経験から、こういうのをキッチリ守れたり鮮やかな追い越しを見せてくれる(そして走り去っていく)のはスカイラインとかRX-7とかとんがった車に多い。)
俺は自分の傾向を知って、努力して大人の運転を心掛けてる。俺が正義だ、にならないよう自分が間違ってる可能性も考えて、常に恥ずかしくない運転をしようとしてる。今日のオッサンは自分の間違いに気づかずに、思い込みから恥ずかしい運転を見せた。だけど周りの車がどれだけわかってくれてたかわからない。こんな考えのオッサンは一人じゃないのだ。むしろ多数派なんじゃないかとか思って今日は凹んだ。バイクってだけで簡単に色眼鏡で見られるし(警察も例外ではない)、優等生であろうとしても周りの車がそういう運転をバイクに期待してないってのは免許とって道路に出て一ヶ月でわかった。所詮 車にしか乗らないやつは車のことしか考えてなくって、世の大半の車とドライバーは敵です。
車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。
そうしないと Wikipediaにリンクできないので。Ruby-1.8.2以降ならNKFでUTF-8が扱えるはず。古いNKFが入ってなければ。