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脳log[読んだ: 2005-06-22~]



2005年06月22日 (水)

[読んだ][] 東野 圭吾 【変身】

脳移植により他人の脳片を埋め込まれた男が変わっていく。それを自分で自覚しているところに残酷さがある。記憶の中の自分と現在の自分の考え方・性格・能力が移植の前後で滑らかにつながっていないから、自分の記憶が他人の記憶に思えたり(1)、現在の自分が自分でなく思えてくる(2)*

主人公・成瀬純一の言葉

生きているというのは、単に呼吸しているとか、心臓が動いているとかってことじゃない。脳波が出ているってことでもない。それは足跡を残すってことなんだ。後ろにある足跡を見て、たしかに自分がつけたものだとわかるのが、生きているということなんだ。だけど今の俺は、かつて自分が残してきたはずの足跡を見ても、それが自分のものだとはどうしても思えない。二十年以上生きてきたはずの成瀬純一は、もうどこにもいないんだ (p.p.236-237)

それに対する堂元博士の言葉

君は昔自分がつけたはずの足跡が、自分のものでなくなったという。しかしそれでもいいではないか。(略)。だが彼ら(注・老人)はやがて自分の足跡がどこにあるのかも、自分が足跡をつけたという事実さえ忘れてしまうという状態になる。(p.p.260-261)

他人事じゃあないんだよね。脳移植はなくても自分が自分でなくなる恐怖ってのは長寿とセットになって誰にでも降りかかってくるんよね。

* (1)と(2)では自分の依って立つものが違うんだけど一体どっちが「自分」なんでしょうね。成瀬純一は記憶の方が本来の自分だと「知って」たわけだけど、それを隠されると……。