ネガティブ思考な大学生が引っ越した家には姿は見えないが幽霊となった前住人がいて、彼女の飼っていた子猫を加えた二人と一匹の同居生活が始まる。
ラストの幽霊からの手紙はね、卑怯だよ。手紙を使うのは。
全編通してあたたかい空気(幽霊)が漂う、期待を裏切らない(スニーカーの) 乙一らしい作品。
14歳で金持ちの一人娘ナオは血が繋がってない両親の愛情が信じられず、使用人のクニコを共犯に巻き込んで誘拐事件をでっち上げる。
事件を通して親の愛情を確認していくだけでは終わらない。ストーリーはナオ視点で語られる為、ナオが騙されれば読者も騙される。最後に落ちが用意されてました。
落ちに関して。ナオみたいにクニコ夫婦を容認することには強い抵抗を感じる。彼らは紛れもなく犯罪者なのだから。ラストで証拠隠滅の為にナオが殺されるのでないか心配したよ。
自分の高校時代が思い出されてイヤだ。そのまんまだよ。
周囲とうまく付き合えない女子高校生が唯一理解し合える友人を見つける。恋心を抱くまでになったその相手は、初めて会った日に自分をかばって事故で死んでしまう。少女は今(ラスト)では普通の大学生。
どこの学校にも一人はいそうな少女の話に「頭の中の携帯電話」という要素を加えて短編に仕上げている。頭の中の携帯電話は想像の産物だが、それを通じて話をしている相手は実在しているので、(本物の)電話で話したり会ったりもできる。これだけでは単に脳にケータイを仕込んだ便利で電波なヒトなのだが、ミソはこの携帯電話を通じて話してる相手と自分の間には常に一定時間のずれがあり、未来もしくは過去の人間と話をしているのだということ。これでちょっと面白くなる。
(2004-08-07)
十一歳の少年が二人。一人には他人の傷を自分の体に移す能力と、逆に自分の体の傷を他人に移す能力がある。無垢で周囲に傷つけられることの多い二人がこの能力をどう使うのか。話が進むにつれどんどん痛くなってくるのだが救いのないラストではない。
若干能力に違いはあるがグリーンマイルのジョン・コーフィを思い出す。彼は偶々見かけた死にかけの双子の少女を助けようとしたが間に合わず、その現場を誤解されて殺人の罪で電気イスに座らされる。コーフィは他人にはない人を救う力を持ち、その力を純粋に他人の為に使ったが、自身は幸せになれなかった。
(2004-08-07)